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社長日記

デバッグの本:その3

ゲーム書籍を気ままに紹介するコーナー、前々回、前回に続いてつい最近発売されたデバッグの本を。同じテーマで3回連続は初めてです。そんなにゲームテストが世の中的に注目されているのでしょうか?今回取り上げる本はこちら。

『ゼロからはじめるゲームテスト:
壁抜けしたら無限ガチャで最強モードな件? 』

ラノベのようなタイトルですが、発売元は創業が大正3年という理工学関係の出版では老舗中の老舗、オーム社です。高校や大学の教科書やゲームに限らず各種プログラムの専門書も多数出版しています。プログラマーの机の上に、この手の分厚い(そして高額な)書籍を見かけることが良くあります。私はさっぱりわからないので手を出しませんが、
『ルールズ・オブ・プログラミング より良いコードを書くための21のルール』
など書名からして手元に置いておきたくなりますね。

本書の最大の特徴は「アプリゲーム」に特化した内容であること。冒頭に

 ゲームテストは、おもにスマートフォンにダウンロードしてプレイする
アプリのゲームを対象としたものです。~中略
 家庭用の据置型ゲーム機や携帯型ゲーム機、アーケードゲームについては
対象としておりません。~後略

とはっきり書いています。プラットフォームを絞ったことで、より実践的なテストや不具合の種類などが参考事例として挙げられています。その数、ざっと30例以上。それぞれのバグ紹介も、

① 4コマ漫画による導入
② バグ報告書
③ バグの原因
④ 対策の提案

など見開き2ページでコンパクトにまとまっており、サクサクと読めます。バグの種類も

*パラメータ異常系
通常プレイにおいて明らかにおかしいもの(レベルアップ時の数値が異常に多い、必殺技が強すぎてボス一撃、逆に敵が固すぎる等)

*表示の不具合系
キャラが崩れる、背景に隠れてキャラが見えない、テキスト関連等

*端末やOS異存の不具合
*イベントの公開日時設定ミス、報酬データの更新漏れなど運営サービス関連

など、書いていてあまりに日々の業務と重なるためどっと疲れが出てきました。それくらい「あるある」に溢れています。

本書の後半ではより考察を進めて、見つけたバグをきっかけに、さらに類似バグを探したりどのバージョンから発生していたかを調査、海外版でも発生しないかなど経験と知識が必要とされるテストケースへの思考などにも踏み込んでいます。ここまでデバッグしてもらえると開発者としては大変ありがたいです。

書かれている文章は平易ですが、内容としては後半に読み進むにつれ、かなり本格派かつ専門的になって行くのでちょっと興味があるという人よりも、アルバイトや業務で必要に迫られてゲームデバッグを行う人にちょうど良いかもしれません。本の帯にはCEDECで何度も登壇されているセガのクオリティエンジニア粉川 貴至さんの推薦文があります。

 駆け出しエンジニアのころ、こんな本が欲しかった!

確かにゲーム開発に関わる前に、これくらいの知識があれば不具合の発見、報告、そして対処方法など何かと動きやすいかもしれません。読んですぐにはわからずとも実際に開発していく中で似たようなバグ、不具合は必ず当たります。その時に読めばすんなり理解できるでしょう。ということで、ゲーム開発者の方は手元に一冊置いておくのも良いかと。おススメの一冊です!

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