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制作現場の日常

クリッカーゲームのインフレはどうして面白いの?

こんにちは、プランナーの清水です。

みなさんはクリッカーゲームや放置系インフレゲームをプレイしたことはありますか?クリックやタップで「ゴールド」や「クッキー」といったゲーム内リソースを増やしていくシンプルなゲームジャンルです。
リソースを消費することで様々なアップグレードができ、それにより得られるリソースは雪だるま式に増加していきます。そしてリソースが数万、数億とインフレしていく様子に楽しさや中毒性があるのです。有名なもので言えばクッキークリッカーが挙げられますね。自分はスマホアプリのクリッカーゲームを好んで色々とプレイしています。

さて、私は上記の説明でも出てきた「インフレ」という単語に引っ掛かりました。どうしてゲーム内リソースがインフレしているのにゲームバランスは崩壊しないのでしょうか。具体的にはゲームの進行度曲線がどのように設計されているのか、プランナーとしては非常に気になるところです。

ゲームが進むペースについて

RPGのレベル上昇ペースのイメージ

ここでゲームが進む「ペース」について考えてみます。

例えば簡易的な例として、勇者のレベルが100になったらクリアとなるRPGがあるとします。一般的にレベルは序盤は上がりやすく、ゲームが進むにつれ上がりにくくなります。序盤はプレイヤーにゲームの進行を実感させ、なおかつすぐにゲームクリアとなってしまわないようにするためです。つまりペースはじわじわと落ちていく。プレイヤーは段々とレベル上げ(ゲームの攻略)に疲れていくでしょう。

ただし、メタルスライムのような経験値を大量にもったエネミーが出現するボーナスエリアまで辿り着けばペースはグンとアップしてプレイヤーは快感を得ます。これを革命的な進歩という意味でブレイクスルーと呼んでみましょう。

クリッカーゲームとブレイクスルー

クリッカーゲームのリソース増加ペースのイメージ

次にクリッカーゲームについて考えてみます。

クリックにより得られる「リソース」はゲーム開始時は少ないものの、アップグレードにより飛躍的に効率を上げることが出来ます。例えば……

  • 「1回のクリックで得られるリソースが〇〇倍」
  • 「アップグレードにかかる費用が〇〇%減少」

などなど。

これは前述のブレイクスルーということになりますね。ただ前例のRPGと違うのは、こちらではゲーム開始直後に発生し、さらにその後も継続的にブレイクスルーが起き続けるということです。常に上位種の大量経験値エネミーを見つけていく、クリッカーゲームの中毒性はそんな連続的なブレイクスルーにより実現しているのでしょう。

クリッカーゲームのブレイクスルー発生ペースのイメージ

連続的なブレイクスルーはインフレを引き起こすため、その結果クリッカーゲームのリソース総数の桁数は際限なく上がっていきます。

ただし、一般的にブレイクスルーを起こす頻度(インフレのペース)はゲームが進むにつれ落ちていきます。全てのアップグレードコンテンツを終了させてすぐにゲームクリアとなってしまわないようにするためです。インフレの実感は薄れていき、プレイヤーは段々とブレイクスルーを目標とするプレイに疲れていく……。

あれ?RPGの例と似た内容になってきました。

しかし大抵のクリッカーゲームには「ブレイクスルーペースを飛躍的に上げる高次のブレイクスルー」が用意されています。ある程度のアップグレードを引き継いだ状態でリセット&周回プレイなど、いろんなゲームで見かけますね。

クッキーは低次のリソース

——と、ここまで書いて気づいたのは、異様だと感じていたクリッカーゲームのゲームデザインも一般的な他のゲームと型としては同じだということです。クリッカーゲームの実質的なゲーム内リソースは「起こしたブレイクスルーの数」であり、1回のクリックで増えるリソースはひとつ低次のリソースということになります。
リソースの次元を変えることでプレイヤーを混乱させ、「自分はゲームバランスを崩壊させている」という優越感を持たせつつ、実際は堅くゲームバランスを制御しているのでしょう。

数字の増え方だけでここまで人を狂わせられるとは!ゲームデザインは奥が深い……。

今回は普段何も考えず遊んでいるクリッカーゲームを自分なりに分析してみました。一度立ち止まって「どうして面白いのか」を考えるのはゲームデザイナーとして良いトレーニングになりますね。

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