ゲーム翻訳について
ゲーム業界に関する書籍を思い浮かぶまま紹介するブログ、今回は「ゲーム翻訳」という珍しいテーマを取り上げてみたいと思います。
最近は超大作のフルプライスなゲームからオリジナリティ豊かなインディゲームまで家庭用、スマートフォン、PCと幅広いプラットフォームのすべてにおいて海外のゲームを遊ぶことがすっかり普通になりました。うちの子どもも少し前はマイクラ、その後はFortnite、Apexと流れ、今はValorantにドはまりと洋ゲー三昧です。友達とオンライン上で延々遊べ、しかも基本無料。外出しづらいご時世という情勢もあり、ゲームの時間ばかり増えていくのはどのご家庭も同じなのではないでしょうか。
前職では日本のゲームを海外向けに制作(ローカライズといいます)することは多数、経験しました。英語はもちろん「FIGS」と呼ぶ4言語、すなわちフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語という欧州向けの翻訳が当初は多かったのですが、時代とともに繁体字や簡体字などの中国語やハングルなどアジア向けのローカライズのニーズが増えていった記憶があります。日本語は漢字が使えるので少ない文字数で伝えられるところ、他の言語では文字数が圧倒的に増えて苦労することもしばしば。特にドイツ語は長い単語が多くて大変でした。
海外向けのゲーム制作において、大変頼りになるのがゲーム翻訳を専門とする翻訳者の方です。ゲームは専門用語も多く、また遊ばないとわからないことも多々あります。ローカライズのクオリティがゲームの面白さにもダイレクトに影響するため、翻訳担当の選定は非常に重要でした。
ゲーム翻訳についてまとまった文献などは自分が知る限り見かけたことがなかったのですが、『通訳翻訳ジャーナル』というてんで英語がダメな自分とは無関係な雑誌で特集されていることを知り手に取った次第です。
冒頭はローカライズスペシャリストのインタビューから始まり、特集コーナーではゲーム翻訳者に求められることから、ローカライズに関する用語集、開発スケジュールや実際にゲーム翻訳で用いられるExcelファイルの内容など、かなり踏み込んだ内容。その他、実際のゲーム翻訳の想定問題やローカライズが優れているゲームの紹介まで幅広い内容です。なかなか垣間見ることのできないゲーム翻訳についてコンパクトにまとまっている本書、興味ある方はぜひ。