ボードゲームの本
アナログゲーム、ボードゲームが流行っているそうで。といってもここ数年のブームではなく、2000年代以降じわじわと浸透し、この10年くらいでさらにプレイ人口が増えた気がします。数年前に東京ビッグサイトで行われている『ゲームマーケット』というアナログゲームの即売会に行ったことがあるのですが出展社、参加者でとても賑わっていたことを思い出します。
今回の書籍はそんなボードゲームについて書かれた本です。
『ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ』
與那覇 潤 (著), 小野 卓也 (著)
本書ではネットやデジタルが進んだこの時代にボードゲームがなぜ流行っているのか、その背景には何があるか、といった要因を著者2名が様々なボードゲームを遊びながら考えるという構成になっています。
著者の一人は歴史学者兼評論家。もう一人はお寺の住職兼ボードゲームジャーナリストというこの世に二人とはいないであろう肩書を持つ方。サブタイトルにある「遊戯」は、ここでは「ゆうぎ」ではなく仏教用語の「ゆげ」と読むそうです。
・心に任せて自由自在にふるまうこと。
・遊び楽しむこと。
ボードゲームには勝敗にこだわらず、ただ楽しむ、という側面が今の時代にあうのでは、という仮説は著者自身がうつで療養中にリハビリの一環で体験したボードゲームとの出会いから着想を得たそうです。
基本的にゲームはルールにのっとり、勝敗や順位を競うことが多いです。FPS、対戦格闘ゲーム、レースゲームなどデジタルゲームでは特にその傾向が非常に強いでしょう。翻ってボードゲームでは、確かにそういったゲームもたくさんありますが、パーティゲームなどは勝敗よりもその場にいる人で盛り上がることが目的だったりします。
初めて会う人とボードゲームをする場合、詳しい人が初見の人にルールや遊び方を説明することが多いです。その際に、「初心者だから徹底的に勝ってやる!」とは普通思わず、「みんなで楽しみたいな」という気持ちが働くのがボードゲームの良さである、とのこと。いわば「利他心」が「利己心」を自然な形で上回る、その自然さが非常に大事、という分析には膝を打ちました。
本書の試みとして、その領域の専門職の方とボードゲームを遊ぶ、という章があります。
経済学者と経営ゲームをプレイ。
国際政治学者と交渉ゲームをプレイ。
現代史研究者とウォーゲームをプレイ。
などなど。以前、ブログで紹介した『ゲームさんぽ』と似た切り口ですね。ボードゲームは教えながら一緒にプレイするという楽しみもでき、より解像度は高いかもしれません。相手との実力差が大きい場合、その場にいる人の同意を得て簡単にルールを変えることができることもアナログの強さです。
本の帯にあるように、「ボードゲーム哲学」とも言える内容なのでやや難しいテーマですが、単純に遊んで楽しいゲームも多数紹介されているので気になるページ、知っているゲームの部分だけ読んでも良いかと。ボードゲームの魅力の一片が少しわかった気がします。おススメです!