デバッグの本:その一
ゲーム開発は多くの職種の人が集まり、チームを組んで制作していきます。
遊びのルールや仕組みを考えるプランナー。
グラフィック全般を手掛けるデザイナー。
各種データをとりまとめ、実装していくプログラマー。
他にも様々な職種の人が専門性を発揮し、開発を進めて行くわけですが、職種の垣根を越えて皆でやるべき仕事があります。それが「デバッグ」です。
デバッグとはゲームプレイにおける各種不具合を発見、報告する作業のことです。開発中のゲーム、特に初期段階などは仮データも多く、おおよそ作りかけのため普通に遊べないこともままあります。良くゲーム業界以外の方と話をしていると「仕事で好きなだけゲームが遊べて良いですね」といったことを冗談っぽく言われたりしますが、先述したとおり、世の中に出ているゲームは長い開発期間を経て、バランス調整を行い、不具合をほぼ取り切った状態で発売されているため遊んで楽しいのであって、開発途中のゲームは楽しむものではありません。不具合の発見など目的が異なるのです。とはいえ、ここをおろそかにすると製品のクオリティに直結するので非常に重要な仕事です。
私が新卒でゲーム業界に入り、一番初めの仕事の一つがデバッグでした。入社した会社では開発部門に配属された新人はおそらく職種問わず、一定期間みんなデバッグを経験したと思います。
・仕様や資料通りに動作するか?
・特殊な操作をしても問題ないか?
・報告したバグは次バージョンで修正されているか?
開発資料をもとに自分で考えながら様々なプレイを試し、バグを発見、再現方法を検証し、開発チームにわかりやすくレポートするなどデバッグ業務では気を付けることは多岐に渡ります。いま考えると、ゲーム開発の入り口に立つ新人には、うってつけの仕事だったと思います。
と、自分の経験を長々と書いてきましたが、裏方的な側面のせいかメインテーマになりづらかったデバッグですが、このところ関連書籍が立て続けに発売されました。今回はその中の一冊を紹介します。
『多すぎる!国産アプリのバグ退治』
栗本 泰司 (著)、 松本 公三 (著)
著者の一人は業界でも最も歴史のあるデバッグ会社「ポールトゥウィン」の創業者の一人だそうです。古くはゲームのデバッグは開発者自らが行う、あるいは各社ごとにアルバイトなどを独自に集めていましたが、一つの独立した事業としてゲームデバッグサービスを展開したのはおそらくポールトゥウィン社が初めてだったのでは、と思います。
本書は開発する立場の方と、デバッグを請け負う方との対談形式で書かれています。
・バグが出る理由
・テストチームの仕事内容
・バグの具体例
・バグを減らす方法 など
ゲームデバッグは特殊なせいか、本書ではあまり取り上げられず、一般的なソフトウェア開発におけるバグの事例や発見方法などにページが多く割かれています。そもそも「デバッグってなに?」と言葉すら聞いたことがないような人でも読めるようなエントリー的な位置づけを狙っているのではないかと。かなりくだけた内容なので読みやすいです。繰り返しになりますが、デバッグはゲーム開発に関わる全ての人が体験すべき業務なので一読しても良いかと。おススメです!