非ゲーム業界の人間が1年で得た気づき
こんにちは。プランナーの高島です。
今回はゲーム開発のプランナーという観点から、仕事に携わる中で日々大切だと感じた「気づき」を3点紹介します。
私自身の話をすると、前職は大手製造業の法人営業、ゲーム業界への転身を決めたのが丁度1年ほど前でした。この記事は1年前の自分に対してのある種のガイドでもあり、また自分と同じようにゲーム業界に興味がある人々への何らかの後押しになるような、普遍的な内容でお伝えできればと思います。
今回挙げる「気づき」は下記の3つです。
- 言葉はゲーム開発の生命線である
- ゲーム以外の知識も武器になる
- ゴールまでやり抜く姿勢が求められる
言葉はゲーム開発の生命線である
ゲーム開発の現場では「イメージの共有」を目的に言葉によるコミュニケーションが行われています。
言葉によるコミュニケーション自体は、業界を問わずごく当たり前のことではあります。一方でゲーム開発においては「従来ないものを作ること」「ユーザーの体験を創ること」を目的として「イメージの共有」を図ることが多くあります。
ここで課題となるのが、言葉は人によって受け止め方が変わるため、個々人が思い浮かべるイメージは人それぞれになることです。一口に「横スクロールアクション」と言っても、左右キーを押した時の速度の変化やジャンプの高さなど、ゲームの根幹をなす手触りのイメージは各々のプレイ体験によって異なることが想像されます。またゲーム開発に関わる人々が多いほど、その人々のバックグラウンドが多種多様であるほどイメージの違いが生まれやすいので、発信する言葉には高い正確さが求められます。
具体的には、企画コンセプト資料や仕様書といったゲーム内の「こうしたい」「こうあるべき」を定めたドキュメントから、他のスタッフへの伝達のためのSlack上でのやりとり、またはオンラインミーティングでの状況共有などコミュニケーションの形態は様々です。いずれの場合でも、正確に物事を伝え、関係する人々との共通認識を図るということが何よりの要件となります。
ゲーム以外の知識も武器になる
ゲーム開発では、時折ゲーム以外の知識が武器になることがあります。
今回は例として「数学の知識」を挙げてみます。
例えば「コインを1枚投げて1枚表が出る確率」は、当然「50%」です。
また「コインを2枚投げて1枚表が出る確率」も、「50%」になります。
では、「コインを10枚投げて表が5枚出る確率」はどのようになるでしょうか。これは「50%」にはなりません。表が5枚出る確率が最も高く、表の出る枚数が増える/減るに従ってその枚数が出る確率は減少します。
これは「二項分布」という統計学の知識になります。これを用いることにより、例えば「ゲーム内でランダムで獲得できるアイテムの数量と頻度」の妥当性を確かめることができます。
確率と期待値、という知識だけでも当然このような数量の検証はできます。ここに「どれぐらいの頻度で」という指標まで踏み込んで考察することにより、プレイヤーでの手元の体験をより具体的にイメージできる手がかりを得ることができます。
上記の例は数学の知識を専門とする人からすれば初歩的な内容にはなりますが、自分が「面白い」「こうあるべき」という手触りを人に説明する際に役立つことがあります。この例に限らずどんな知識や経験でも、ゲームを面白くするためのヒントは思わぬところで役に立つことがあるので、あらゆる物事に興味を持つことはそれだけで多くの武器につながる可能性があります。
ゴールまでやり抜く姿勢が求められる
ゲームプランナーは「こんなものを作ります」という立場からスタートして何かを作ることを主導する局面が多々訪れます。しかし、それは自分が最初にイメージしたそのまま、何の問題も発生せずゲームという形で世の中にリリースされることはまずありません。
ゲーム作りは複数人での共同作業である以上、事前にいくら抜かりなく準備をしても想定外の問題が起こることはつきものです。それを横断的な立ち位置で状況を見極めるのは、他でもなくプランナー自身です。
ゲーム作りはおおむね「コンセプト検討」「仕様決め」「発注」「実装」「調整」のフローに沿って次第に出来上がります。「何を目的に新しいものを作るか」「目的を満たす機能になっているか」「デザインやテキストの伝わり方などに問題がないか」といった多角的な観点から、それぞれのフローが万全に進んでいるかを厳しくチェックすることがプランナーには求められています。
時には対処が難しい問題に直面することがあります。自身が即座に判断してよいかわからない小さなものから、複雑に込み入った大きなものまで状況により問題の形は様々です。この時「何が問題か気づくこと」「それを誰にでも丁寧に説明できる準備をしておくこと」は解決の助けになります。プランナーはある意味、企画の着手からゲームのリリースまで、問題解決をし続けることが求められる役割であると言えるかもしれません。
そうしてリリースされたゲームについてユーザーの反応をみつつ、次に生かせる改善点を挙げていくこともプランナーにとって大切な仕事になります。
最後に
私自身ゲーム開発の現場に携わり実感したことは、専門性の高い知識それ自体を軸に仕事をするというより、むしろオールラウンドの立ち回りの中で状況に応じた最適解を模索するという仕事の進め方が多い、ということでした。
今思えば1年前の自分にとって、「ゲームを作ること」「プランナーとして仕事をすること」は何の取っ掛かりもない挑戦であったと思います。たとえMayaに習熟していようとUnityで独力でゲームを完成させた経験があろうと、ゲーム開発の前提になる知識として役立つことはあっても、プランナーとして求められる役割やスキルとしては全く別のものです。これはゲーム開発の現場に入ることでしか気づかないことのほうが多いので、今回の記事では現場での仕事を通じて得た「気づき」という観点で纏めました。
今回の記事は以上となります。ゲーム作りに憧れを持っていた1年前の自分のように、ゲーム業界を志望している人がもしこの記事から何かの気づきを得られたら大変有難いことです。