会社員プロデューサー論
ゲームに関する書籍の収集が趣味で、新しい本が出ないか常にネットで検索しています。一番好きなのはクリエイターインタビューなのですが、ディレクターなど制作に携わる人のものが多く、プロデューサーのものはあまりありません。そんな時に知ったのが今回取り上げる一冊、『主人公思考』です。
バンダイナムコの大ヒットシリーズ、『アイドルマスター』の総合プロデューサーによる仕事術に関する本。私も起業する前は長らく会社員プロデューサーでしたし、現在、制作しているゲームはアイドルに関するもの。まさに私向けに書かれた一冊では?!と発売を大変楽しみにしていました。
『主人公思考』
坂上 陽三 (著)
本書は6章で構成されています。第1~2章は『アイドルマスター』誕生秘話。おそらくこの本を手にする多くの方がアイマスファンでしょうから、ファンが最も知りたいことが書かれていると思います。とはいえあくまでこの本は仕事術、思考方法がメインテーマなのでアイマスの話はオーソドックスな範囲にとどまり、裏話などを期待していた人にはやや物足りないかもしれません。
第3章はプロデューサー視点によるクリエイティブ論。ゲーム制作の工程、その中でのプロデューサーの役割、重視すべきことなど。書いてあること全て同意します。以前、私が社内向けに作った資料と同じキーワードがたくさん出てきて、「会社は違えど考え方は通ずるものがあるなぁ」と深く納得しました。なんとなく考えていることを、こういった形で文章にまとめられているのは大変ありがたいです。
第4章はプロデューサーに限らず、どんな職種でも通用する仕事に対する取り組み方、考え方などが書かれています。著者の言葉を借りるならこれがタイトルにもなっている「主人公思考」なのですが、この言葉だけではわかりにくいのでぜひ本書で内容を確かめてください。取り組みについてはいろいろ書かれていますが、個人的には
>僕はどんな仕事でもまず受ける、ということを新人の頃から意識していました。 (P.143)
という一文が特に記憶に残りました。「アイマス」の開発に参画するのも、この
姿勢があってこそというのは前章でも書かれています。自分と照らし合わせても「これは私がやるべき仕事なのかな…」と迷うような仕事が、いざやってみると面白かったり、ビジネス的な成功を得たりと重なることが多かったです。
第5~6章はマネジメント向けな内容なので、読む人を選ぶかもしれません。まだその立場にない人にとっては、上司の考えを想像するにはよいきっかけになるかも。
全体的には非常に平易な文章で書かれており、徹底的にわかりやすさ、ユーザーフレンドリーを意識した内容に感じました。アイマスファンだけでなく、クリエイティブワークに従事する人であれば誰もが何かしら得るものがある良著と思います。おススメです!