Blog

新人日記

物理法則と誇張表現

こんにちは。新人デザイナーの伊藤です。暑くなってきましたね…。

「慣性の法則」を覚えていますでしょうか?中学3年あたりの理科で習う…アレです。すごく簡単に言うと「外からの力を受けない限り、現在の状態を保とうとする性質」が「慣性の法則」です。だるま落としや乗り物のブレーキなんかがよく例に挙げられています。だるま落としは、積み上げられた木片に勢いよく木づちを打ち付けると、打ちぬかれた木片以外は下に落下します。乗り物にブレーキがかかると、人や物はそのまま進行方向に向かって動こうとします。こういった例が慣性であり、日常生活でもよく目にしたり体感する機会があるかと思います。

この「慣性」も自然なアニメーションをつくるために常に頭に入れておきたい要素のひとつです。

『ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 ― The Illusion of Life ―』という本の中に「アニメーションの12の原則」というリストがあります。そこにはキャラクターをより人間らしく、より感情豊かに見せる演出についてが記載されていています。その12原則の中に「慣性」や、前回の記事でお話した「生き物が動き始めてから動き終わるまで等速で動くことはない」といったような物理法則が含まれているのです。

「5.後追いの工夫」は慣性の法則、「⒍両端づめ」はイーズイン、イーズアウトにあたります。「1.潰しと伸ばし」「10.誇張」などに関しては、トムとジェリーのアニメの動きを想像してもらえたらと思います。この12の基本原則は物理法則に則った動作+非現実的な演出の組み合わせによってできたものだと解釈しています。中にはとらえ方が難しいものもありますが…。

12の基本原則の中の「5.後追いの工夫」のアニメーションを作成してみました。
慣性の法則に則った動きに「⒍両端づめ」と「10.誇張」を加えると、カートゥーンチックで有機的な印象になりますね。

アニメーションは「嘘」の表現だけだと、ただの違和感のあるものになってしまいますし、逆に現実をありのままに再現するだけでは、味気のないものになってしまいます。アニメーションの先駆者たちが編み出したこの表現方法を常に念頭に置いておきたいです。今はキャラクターを違和感なく動かすだけでもいっぱいいっぱいですが、ただ動きをつけるのではなくより魅力的に見せる工夫ができたらなと思います。

このブログを書いていて、久々にディズニーの『ファンタジア』が見たくなりました。

次の記事へ