ゲーム史の本:その2
シャチョー池尻がつらつら更新するゲームについての本、二冊目の紹介。
『教養としてのゲーム史』 著:多根清史
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タイトルがいいね。ゲームについて語ることを「教養」と言い切るなんて。良い時代になったものです。各論に入る前に、総論からシリーズ第二弾。
前回の『僕たちのゲーム史』が「物語を体験する器としてのゲーム」という一風変わったアプローチでまとめられた変則的な本だったが、今回の本はど真ん中ストレートにハードウェアの進化とそれに伴うアイデアの進化、ジャンルの多様性という王道のまとめ。初めに紹介されているゲームもノーラン・ブッシュネルの『ポン』と、ゲームの歴史を紐解くときにまず候補にあがる安定の滑り出し。ちなみに『ポン』は一画面に右と左に棒が配置され、2人でボールを打ち合うという誰もが見たことのあるビデオゲームの元祖で、日本ではテーブルテニスという名称でいろんな会社からリリースされたゲーム。その後、ブロック崩し、インベーダーと画面上に表示されるものが多く、動きがつき、単色からカラーになるなどテクノロジーの進化を遂げていく。
前述のゲームはいずれも固定画面=一つの画面の中でゲームが完結するタイプのゲームだが、二章では「スクロール」、すなわち画面が上下左右に移動することができるタイプのゲームが主役になる。名作の誉れ高い『ゼビウス』は下から上へ、全世界で最も売れたゲームとして誰もが知る『スーパーマリオブラザーズ』は左から右へ。いずれも出発地点から前進しながら障害物を避け、敵を攻撃、回避して目的に進むというゲーム性である。ゴールに向かうということで目的やドラマ性も出て、ゲームは反射神経を競う単純なものから「物語の体験」という側面にも広がりを持つ。
第三章はRPGの台頭、第四章は多種多様なシミュレーションゲームについて。いずれも日本独自の進化を遂げ、RPGの解説では海外RPG『ウルティマ』と『ウィザードリィ』のそれぞれ良いところを融合し、遊びやすさと物語の魅力でひっぱる『ドラゴンクエスト』を、シミュレーションでは『大戦略』『信長の野望』といったウォーSLGから、育成する対象を競走馬に変えた『ダービースタリオン』、日本独自のアニメ市場との相性の良さから生まれた『プリンセスメーカー』などが事例としてあげられる。
このように4章構成でテクノロジーの進展とジャンルの進化、多様化について駆け足で振り返る本冊。全体的に紹介されているゲームが古いことが難点だが、メジャーどころなタイトルが中心なので聞いたことはあるかも、といった感じで読み進められるのではないかと。
個人的には第二章の「スクロールするゲーム」でビデオゲームとしての体裁はほぼ完成したと思う。進む方向が上下か、左右か、はたまた表現方法が2Dか3Dかの違いはあれど大本となる発想は近しいし、これを上回る表現方法はなかなか出ないと思ったため。しかし、まさか21世紀に入って十数年もたつ現在、『パズル&ドラゴンズ』『モンスターストライク』『FGO』などスマートフォンがゲームのメインプラットフォームとなり、原始的なビデオゲームに多かった「固定画面のゲーム」が主流になるとは。これだからゲーム開発は面白い。ということでおススメです!