ゲーム開発苦労話の本
趣味と実益を兼ねたゲーム関連書籍の紹介というテーマで月に一冊ペースくらいで気に入った本をとりあげています。昔に比べて、ゲームに関する出版物がとても増えたので買っても読む時間がなかなかなく、積み本が増えていく今日この頃。ですが、今回の本は面白くてあっという間に読み終えました。
『血と汗とピクセル:大ヒットゲーム開発者たちの激戦記』
ジェイソン・シュライアー (著)
よく日本人は効率的に仕事をしない、残業が多い、有休消化率がとても低いといったニュースなどを見かける。翻って海外は仕事より家庭、ワーク・ライフ・バランスに優れているというイメージが強い。私もそう思っていた。そういったイメージを木端微塵にぶっ壊す数々の事例を取り上げたのがこの本である。
「良いゲームであろうと、つまらないゲームであろうと(=ここ大事)、ゲーム制作は大変な人数、時間、費用がかかるものである!」
薄々わかっていたのだが、やはりそうなのだ。日本も海外も一緒なのだ。いや、規模が大きいから海外のほうがもっと大変かもしれない。
本書の帯より。
・たった一人で5年近くかけて開発して数十億円を売り上げた青年
・ゲーム開発の伝統がなかった東欧企業が生んだ世界最高のRPG
上記は大変な苦労の末、大成功を収めるハッピーエンドのケース。
・大ヒット間違いなしとされながら開発中止で闇に消えた幻の大作
海外の事例ではこのような世の中に出ない話もきちんと取り上げられるのが素晴らしい。世の常として、失敗の事例は読んでいて面白い(当事者は大変であるが)。
本書で取り上げられているゲームを一部列記する。『アンチャーテッド4』、『ショベルナイト』、『ヘイロー・ウォーズ』、『ウイッチャー3』等々。前述のとおり、インディゲームから超大作までと振り幅は非常に広い。だがどのゲームにおいても「開発現場の情熱、混乱、絶望、そして歓喜。」は規模の大小はあれど、濃密に描かれている。海外スタジオだからスマートに開発しているわけではないのである。締め切りに追われ、時に数か月にも渡り残業が続き、家族と過ごす時間がないといった事態(この状態をcrunchというそうだ)はゲーム制作に於いては往々にして起こりえる。
ビデオゲームという娯楽が生まれて約50年、なぜ未だにそんな状況が続いているのか。以下、本書より一部抜粋。
1) ゲームはインタラクティブである
2) テクノロジーは常に変化している
3) ツールが毎回違う
4) スケジュールが立てられない
5) ゲームがどのくらい楽しいかは、プレイしてみるまでわからない
わかりみがありすぎる。それぞれの項目に詳細が書かれているので、ぜひ読んでいただきたい。
ちょっと脅すようなことばかり書いてしまったが、一番大事なのは惹句の「開発現場の情熱、混乱、絶望、そして歓喜。」の、「そして歓喜」が最後に来ていること。苦労は多いが、やはり完成してリリースすることが何よりの喜びである、と。海外タイトルでなじみがないかもしれないが、読んで損なし。おススメです!
ちなみにこの本、kindle unlimited だと無料。
無料?!
いまならプライム会員限定で2か月無料体験、過去に無料体験した人も3か月299円という破格なキャンペーン実施中だそうで。私は2000円弱で買ったというのに。いやいや、物理的に所持しておきたい本だったから良しとします。