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社長日記

ゲームの小説:その2

隔週更新、ゲーム関連書籍の紹介。今回は趣味と実益とは書きづらい。比率でいけば趣味100%、実益はほぼ皆無かもしれません。アメリカのおたく(ギーク)の妄想をこれでもか、と言うくらい詰め込んだSF小説『ゲームウォーズ』です。

『ゲームウォーズ』(上、下)
アーネスト・クライン (著)


邦題は『ゲームウォーズ』だが、原題は『レディ・プレイヤーワン』。昨年春、監督/製作スティーブン・スピルバーグの最新作ということで大々的に公開されたSF大作映画の原作となった小説。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムマシンであるデロリアンからスーパーマン、バットマンといったスーパーヒーロー、さらにはガンダム、メカゴジラに『AKIRA』のカネダバイクといった日本の漫画やアニメのメカやキャラも出ると話題になった一作。何でそんなありえないような共演が実現したのかというと、その舞台が「ゲームの中」だからなのである。

裏表紙に書かれたあらすじを引用。

西暦2041年。革新的なネットワーク“オアシス”が張りめぐらされた世界は、深刻なエネルギー危機に陥っていた。ある日、その“オアシス”の画面に、「ジェームズ・ハリデー死去」のニューステロップが流れる。ハリデーは、“オアシス”を開発し運営する、世界的億万長者で、ゲーム業界のカリスマ的存在だ。テロップに続いて、ハリデーの遺書ともいえるビデオメッセージが現れ、“オアシス”内に隠したイースターエッグを一番先に見つけたものに、遺産のすべてをゆずることが宣言された―!全米ナンバーワン、SFアクションアドベンチャー!

VRギアを装着し、MMOの世界にダイブインという枠組みは『ソードアート・オンライン』などと通ずるものがある。日米問わず、みんなこういう設定が好きなのね。で、入り込んだゲーム空間が日本だと剣と魔法のファンタジーRPGになりがちなのだが、本書の場合はそういった特定された世界に限られず、「何でもあり」感がより際立つ。一昔前に流行ったセカンドライフや、遊び方に明快な決まりのないマインクラフトに近いかもしれない。先ほどあげたキャラやメカなどは、ゲーム内でアバターやアイテムとなり利用可能というとても魅力的かつ便利な設定なのである。

創造主ハリデーがゲーム内に隠した謎を一番早く解いた者が全てを得ることができるため、敵味方が入り混じって世界を巻き込んだミッションに挑むのだが、この謎の一つ一つがいずれもオタク濃度が高くて。すなわち、オタクの知識があればあるほどゲームクリアに有利であり、ゲーム内で称賛される立場の人間であるという構造。そこが読者の共感を大きく得る所以でもあろう。取り扱われる分野は広く、80年代を中心にゲーム、映画、音楽などいわゆるポップカルチャー全域が対象。この本が楽しめるかどうかは、全編に散りばめられたこのサブカルネタを如何に知っているかどうかにもかかっている。

したがって、作者と同世代の人が本書を一番楽しめるかもしれないが、かといって手を出さないのはもったいない。これきっかけに80年代のポップカルチャーを総ざらいできるという見方もできるのだから。とてもじゃないが元ネタ全てを把握するのは極めて困難であり、興味があるモノだけでも原典を遡るという本筋とは異なる楽しみ方もある。

ちなみに北米での人気はすさまじく、現時点で北米Amazonのレビューをみると約18,000強のカスタマーレビューのうち、星5、4で約90%とという恐るべき高スコア。そもそも5桁のレビュー数って初めてみた。さすが本国。

洋書の翻訳というと読みにくい文章になりがちなのだが、本書は翻訳のレベルが非常に高くとても読みやすい。映画を観てから読むか、原作を読んでから映画を観るか。どちらもおススメです!

 

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