ゲームデザインの本:その2
シャチョーのほぼほぼ趣味であるゲーム関連書籍の紹介コーナー、前回に引き続きゲームデザインに関する本をご紹介。
といっても、今回の本はやや変わりネタ。ゲーム業界において「ゲームデザイン」というと企画内容、ゲームシステムといった意味で扱われがちだが、この本ではビデオゲームだけにとどまらず、もっと広範囲な話題としてとりあげている。
『白井博士の未来のゲームデザイン -エンターテインメントシステムの科学-』
白井 暁彦 (著), はやのん (イラスト)
http://amzn.asia/1B5mS90
ゲームは遊んで面白いものであるが、では、面白いとはそもそもどういうことなのか?という根底の理解から始まる。ゲームに関する論文や教科書的な本で必ず紹介されるヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』における「人は遊ぶ存在である」という説や、有名なロジェ・カイヨワの遊びの4分類(アゴン:競争、アレア:偶然、ミミクリー:模倣、イリンクス:眩暈)など古典的な学説が手短に紹介される。これらの本をまともに読むと難解なので非常に助かる。
「遊び」とは非生産的な活動である。
「遊び」とは虚構の活動である。
「遊び」とは未確定な要素がある。
他にも遊びの要素はあるが、これらを意図的に組み込んだものがエンターテインメント(娯楽、この本の中ではおもてなしという意味でも使われる)なシステムであり、その中の一つがゲームである、と。
ではエンターテインメントシステムとは何か?
「世の中のシステムをエンターテインメントシステム」と「エンターテインメントシステムではないシステム」、の2つに分けるとしたら、その線引きはどこにあるのでしょうか?
これは簡単なようで難しいが、端的な表現で答えが書かれている。すなわち、
そのシステムが「人の楽しみやおもしろいと思うことのためにデザイン(設計)されているか」
が、境目であると。まさにゲームは面白さのためだけに作られている工業製品であり、純度100%のエンターテインメントシステムであろうと言えよう。
著者曰く、今の世の中はエンターテインメントシステムにあふれている、と。プロジェクションマッピングやAR、VRを駆使した様々な展示などがまさにそういったわかりやすい事例であり、ニーズはますます増えていく。それらも含めてゲームデザインであり、ゲームで用いられたテクニックや理論が他業種の製品やシステムにも応用が利くであろう。
最先端の技術や理論にふれつつ、根本的な「面白さ」についての分析、ユーザーエクスペリエンスの重要さなどが多くの事例をもとに紹介されている。ゲーム制作に限らず、「面白い」コンテンツを作る必要がある多くの方にとってためになる本ではないかと。おススメです!