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社長日記

ゲーム史関連:その一

ゲームに関する書籍の感想をつらつらと書いています。前回は2023年ベストとして『セガハード戦記』をあげましたが、複数の本をあげたため肝心の内容については全く触れず。仕切り直しで今回、紹介させていただく次第です。

『セガハード戦記』
著:奥成洋輔

昨今、スマートフォンやPC、家庭用ゲーム機とさまざまなプラットフォームで多くの方がゲームを日常的に遊ばれていますが、一昔前は自宅でゲームを遊ぶのはなかなか大変なことでした。一気に普及を進めたのが約40年前に発売された任天堂「ファミリーコンピュータ」であることは間違いありません。15,000円を切る価格で、ゲームカセットを入れ替えることでゲームセンターと遜色のないさまざまなゲームが家で遊べるという夢のような機械でした。そのFCと同じ時期に発売されたもう一つの家庭用ゲーム。それがセガ「SG-1000」です。

本書は大手ゲームパブリッシャーのセガが1980年~2000年代の約20年、様々な家庭用ゲーム機を発売した軌跡を振り返る本です。大きくわけて

1983~87年 8bit機 SG-1000、マークⅢ、マスターシステム
1988~93年 16Bit機 メガドライブ(MD)、ゲームギア
1994~98年 31bit機 セガサターン(SS)
1998年~2002年 ドリームキャスト

と4~5年のスパンで次々と新しいゲーム機を発売していきます。前半はFC、SFCといった任天堂ハードと、後半はソニー・コンピュータエンタテインメントから発売されたPlayStationシリーズとのシェア競争が激化し、いわゆる「ハードウェア戦争」と日本のゲーム業界が非常に注目され活気のあった時代でした。

著者は現役セガ社員の方。膨大なデータや当時の資料をもとにしつつ、社内でしか知りえない情報や当時の社会風景なども交え、しごくフラットな視点で語られていきます。ゲーム機はいかに性能が良くとも遊ぶゲーム、すなわちソフトがないとただの箱。どういったゲームがどれくらいそのハードをけん引したか、ということはゲームに詳しい人しか書けず、そういった意味でも現役のゲームプロデューサーである著者の知識と分析が本著をただのビジネス本とは異なる一冊としているのは間違いないでしょう。

私が大学を卒業し、新卒で入社したのがセガでした。メガドライブ、セガサターンとセガが業務用、家庭用と様々な分野で市場を開拓していく元気が良かった時代だった気がします。セガハードは「ドラクエ」「FF」といった大ヒットRPGこそ遊べませんでしたが、ゲームセンターの様々なゲームが遊べるという強みもあり、競合ハードと切磋琢磨していました。

SS、PSがほぼ同時期に発売された94年末から翌95年の年末商戦までは私個人も多くのタイトルを担当させていただき、非常に忙しかった記憶があります。若かったので家に帰るのも惜しんで働いていました。会社にいるのが楽しかった、というのもありますが。本書でも書かれていますが、95年の年末商戦、『バーチャコップ』、『セガラリー・チャンピオンシップ』、そしてインベーダー以来の社会的現象を巻き起こした『バーチャファイター2』の3本が揃って発売され、社内は大いに盛り上がったのを今でも記憶しています。(P.194)翌月の『ファイナルファンタジーⅦ』発売予定、のTV-CMが出るまでは……(P.195)

多分に私情も入るため余計に入れ込んでいることもありますが、それを差し引いてもセガのゲーム史がドラマチックに語られていて読み物として大変面白いです。歴史にifはない、といった事はよく言われますが、セガのゲームハード史においても、あの時〇〇だったら、××だったら、と思うことはたくさんあります。ハードウェアの製造を撤退して20年ほどたちますが、いまだに新しいセガハードを求める声が多いのも、それだけセガのゲーム機に愛着を持つファンの多さとも言えるでしょう。つねにユーザーの期待を良い意味で裏切る、上回るセガゆえに、何かやってくれるかも、と今も考えてしまいます。そんなセガの様々なチャンレンジを振り返る本書、おススメです!

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