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制作現場の日常

小春日和の休日は美術館へ

こんにちは、デザイナーの伊藤です。やっと秋らしい気候になりましたね。

秋に行きたくなる場所といえば美術館。涼しげな風を受けながら美術館までの道を歩く時のワクワク感や、美術館を出た後のさわやかな余韻を感じられるのは秋しかない!と思うのです(春でもいいじゃないというツッコミはさておき……)。
そんな思いで先日、国立新美術館で開催されている「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」を観覧してきました。
ファッションは私にとって専門外の分野ですが、展覧会の情報サイトなどで特にプッシュされている企画展なので純粋に楽しめそうだなと思ったことと、デザイナーとして何か学びを得られるかもしれないと思ったことが、足を運ぶきっかけとなりました。

国立新美術館前(モンドリアンモチーフの衣服が目印☆)

「イヴ・サンローラン」とは、20世紀のファッション界を席巻し「モードの帝王」と呼ばれた世界的なファッションデザイナーです。この展示はキャリア40年の歴史を辿った、日本では没後初の大規模な展覧会となります。ルック110点の他、アクセサリー、ドローイング、写真などの262点が、12章の構成によって展示されています。

特に印象深かったテーマは「Chapter2 イヴ・サンローランのスタイル アイコニックな作品」です。この章で、イヴ・サンローランが現代における女性のファッションスタイルの礎を築いたデザイナーであることを知りました。
今では当たり前のように着られているパンツスタイルのファッションは、当時男性のみのファッションとされていましたが、男性用の衣服をヒントに、女性のシルエットを活かし引き立てるような、パンツスーツやタキシードが生み出されていたのです。他にもトレンチコートや、ピーコートなど、現代におけるアクティブな女性をイメージするような衣服が作られたのです。展示されていたタキシードは、男性用のスモーキングジャケット(煙草を吸う時のためにデザインされた服)から着想を得たもので、絹シフォンやサテンの素材感、ゆったりとした裾のシルエットに女性らしい印象を受けつつも、動きやすさが重視されているデザインとなっていました。

他にも、上記とは打って変わって芸術性の高い衣服の展示もたくさん堪能できました。様々な分野の職人たち(織工、染色、捺染、刺繍、金細工、銀細工など)とコラボした衣服や、ある国々をイメージした衣服の展示も煌びやかで見ごたえがありました。また、尊敬する芸術家たちの作品をオマージュした衣服の展示も印象深く、特にゴッホやボナールをオマージュした衣服は、近くで見ると細かい筆跡のような立体感があって力強さを感じられました。個人的に、豪華な衣装はキャプションに記載された使用素材も注目ポイントの1つではないかと思っています(動物の名前が載ってるとびっくりします)。

《アイリス》イヴニング・アンサンブルのジャケット–フィンセント・ファン・ゴッホへのオマージュ 1988年春夏オートクチュールコレクション

この展覧会を通して、イヴ・サンローランが持つ「デザインの哲学」を少しだけ感じ取ることが出来ました。「誰のための、何のためにデザインなのか」「モチーフを再解釈してデザインに落とし込むことの重要性」など、自分の制作においても考えさせられる部分があり、すごく刺激になったと感じています。

12月11日(月)まで開催されていますので、興味のあるかたはぜひ足を運んでみてください!ご覧になる際は、衣服だけでなく解説も見ながら楽しんでいただきたいです。

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