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社長日記

デバッグの本:その2

不定期にゲーム関連書籍を紹介しています。前回に続いてなぜか最近立て続けに出ているデバッグ、QAに関する本の2冊目です。ちなみにQAとは「Quality Assurance」の略称で品質保証という意味です。ゲームはソフトウェアなので問題なく動作するテスト、という意味合いで使われています。

『ゲームをテストする バグのないゲームを支える知識と手法』

余談ですが本書も黒背景にピンクの文字です。偶然の一致なのか、テストにはこういったどぎつい色使いのイメージが起因されるのか……

前回、紹介した本が著者と知人の対話形式による業界よもやま話といったゆるい内容であったのに対し、今回の書籍はタイトルの通り、ゲームのテスト、デバッグに特化したややハードな内容です。

序盤ではゲームテストの概要を説明しています。仕事内容、労働環境、給与や待遇等。少し回り道になりますが、ハードウェアの進化やゲーム開発の変遷、家庭用ゲーム機からモバイルゲームの台頭、ハイパーカジュアルゲームなど最近のトレンドまで触れ、それにともないテスト内容もどのように変わってきたかをコンパクトにまとめています。

中盤ではテストを実施する組織について取り上げられています。現在ではゲームのデバッグやテスト専門の会社も多数ありますが、昔は各会社ごとに内部スタッフとしてチームを抱えていることが一般的でした。ゲームの開発規模が大きくなるにつれ社内だけではスケーラブルに対応しづらく、外部への委託が増えていった感があります。

本書で最もページを割いているのは従来のフリープレイからバグを発見するゲームデバッグを経て、より効率的・効果的なテストとして「ソフトウェアテスト」を導入し、その実践例があげられています。確かに私がQAとやりとりしていたころは開発側から提供される資料も少なく、行き当たりばったりのプレイと偶発的に発見されるバグが多かったですが、最近のQAではテスト項目としてあらかじめ候補があげられているため取り組みやすくなっていると思われます。本書では具体例として

機能テスト/コリジョンチェック/テキストチェック/マルチプレイ/多端末検証/ガイドラインチェック/ローカライズ/ライセンスチェック 

などが一例として挙げられていますが、実際に大変なのは各項目ごとの詳細と実践でして、こればかりは経験してみないとわかりません。

終盤では今後のQAとしてテスト自動化、AIを用いたテストなどにも触れられています。これらはQAにかかるコスト圧縮として最も期待できるので興味を持って読みましたが、最も効果が期待できる手法の一つとして、「開発の一部としてゲーム自体に自動化機能を実装する」とあり、そりゃそうだよなぁと思いつつ別の回答を期待してしまいました。とはいえAIを用いたQAサービスも実際にリリースされているため、個人的にも調べてみたいと思いました。

最初から最後まで一貫してテストに関する内容なので読んでいて面白みには欠けますが、これ一冊を通読しておけば経験ない状態でテスト業務にアサインされてもなんとかなるのでは、というくらい網羅されていると思います。人は選びますがおススメです!

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