BOOK OF THE YEAR 2022
2023年初回のブログのタイトルが『BOOK OF THE YEAR 2022』もどうかと思うのですが、昨年書きそびれていたのでここを逃すとさらに間延びした感じになるのでご容赦願いたく。
趣味と実益を兼ねたゲーム関連本蒐集はいまだ継続しております。
電子書籍も同時発売など販売形式は変わりつつありますが、手元において置きたいので出来るだけ紙の本を選んで買っています。となるとどんどん置くところに困るという自明の理。積み本を整理しながら昨年のゲーム関連の本を振り返ってみました。
特徴としては、メタバースに関する本が非常に多かった1年と言えるでしょう。メタバースというとクリエイティブよりな切り口と、ビジネスよりな切り口、二つの側面を併せ持ちます。前者であればVRスペースの紹介やワールド内で出来ること、アバターの作り方などが多く、後者はWEB3.0/NFT/デジタルツインなどビジネスやマーケティングの側面が色濃く半ばビジネス書の様相を感じます。全部手を広げるとキリがないのでクリエイティブよりな本を中心に購入していました。ざっとこんな感じです。
①『メタバース革命 バーチャル経済圏のつくり方』
②『メタバースビジネス覇権戦争』
③『メタバース進化論 仮想現実の荒野に芽吹く「解放」と「創造」の新世界』
①はVR法人、「株式会社HIKKY」の創設者が著者です。
②は長らくゲームライターもされ、その後VR系の開発会社を起業、
VRゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』などを制作された方の書籍です。
③はメタバースで活動している個人Vtuberが執筆されたもので、現時点では最も実体験に基づいている一冊と思われます。
と数冊あげましたが、改めて思うのはこの手のものは本で知るより自分で体験する方が圧倒的に理解度が高まるだろうな、と。媒体としても紙の本よりWebの記事や動画、もっと言えば体験版などのほうがわかりやすいので文字の有利性を出すのは難しいかもしれません。
大量に発売されるメタバース関連本を読んでそんなことを考えていたところに発刊されたのがこの一冊です。
『リセットを押せ: ゲーム業界における破滅と再生の物語』
ジェイソン・シュライアー (著), 西野 竜太郎 (翻訳)
こちらは2019年のベストとしてとりあげた『血と汗とピクセル』の実質的な続編といった書籍です。前回は海外のゲーム開発の苦労話や成功譚を取り上げた本でした。で今回はというと、ゲーム業界の労働環境、雇用問題に特化したさらにハードなノンフィクションになっていました。全9章ですが、どの章もプロジェクトの中断や中止、レイオフ、スタジオ閉鎖、転職や退職などゲーム開発におけるありとあらゆる苦難に満ち溢れています。およそメーカーからは出てこないような話ばかりなので、辞めた関係者を丁寧にインタビューして裏付けをとったうえで書かれているのかが良くわかります。だからこそ迫真に迫ったドキュメンタリーになっているのでしょう。
日本の場合は転職といっても会社が変わるくらいのイメージですが、海外企業だとアメリカからオーストラリアへ、その後スウェーデンからマレーシアへ、など国をも離れることも珍しくないということには驚きました。独身ならまだしも家族がいる場合はそれは非常に大変でしょう。これが理由でゲーム業界を離れる人も多いそうです。
それでもこの本に登場するゲーム制作者の多くが、苦労はあれどゲーム制作は魅力的であり、より良い環境で継続的にゲーム制作を行う方法を模索しています。国も文化も違えど、それらは大きな励みになりました。
全体的には厳しい話が非常に多く陰鬱ですが、タイトルにもなっている「リセットを押せ」とは、そうした苦難を乗り越えてリセットボタンを押して、チームや環境を組み立て直し、新たにゲーム開発に取り組む希望の物語でもあるのです。読み応えたっぷりな一冊、おススメです。