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社長日記

eスポーツの本:その2

2018年1月26~28日、日本で初となる格闘ゲームの祭典「EVO Japan」が開催。大いに盛り上がった直後に、複数存在していた国内eスポーツ団体が統合、新たに「日本eスポーツ連合(JeSU)」が爆誕。プロライセンスの発行、対象タイトルの発表などにわかに界隈の動向が活発になっています。ということで、前回に続いてeスポーツに関する書籍をピックアップ。

『勝負論 ウメハラの流儀』 著:梅原大吾
http://amzn.asia/9NFZpFn

著者のウメハラこと梅原氏はおそらく日本で最も有名なプロゲーマー。日本人初のプロゲーマーでもある。カプコンの格闘ゲーム、特に『ストリートファイター』シリーズで長年に渡って好成績を残す。17歳で世界大会優勝、ギネスにて「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」として認定されるなどなにかとレジェンドな存在。

氏の著作は何冊かあり、この本は『勝ち続ける意思力』に続く2冊目の本。前作と同様、「どうすればゲームがうまくなるか、対戦で勝つことができるか」というミクロな視点ではなく、全ての物事において通ずるような極めて幅広い考え方、流儀が書かれている。将棋の羽生善治名人の著作『決断力』もそうだが、その道を究めた人はジャンルが違えど達するところは近しいのだなぁ、と凡人のぼんくらな感想。

目次より、気になる見出しを抽出。

 ・勝つことは、実はリスクでもある
 ・頑張ることの価値など、誰も教えてくれない
 ・回り道が必ず役に立つ
 ・長いトンネルの終わりは突然やってくる
 ・目標の設定は「ドーピング」にもなりうる

などなど。すっと理解できることもあれば、一読したときは疑問に思うものもある。特に勝つことが何でリスクになるのかは、文中の説明を読まなければわかりにくいだろう。引用すると、

チャンピオンになれば、とてもちやほやされる。だが、ほめられればほめられるほど、いつかやってくる次の負けにおける落下のダメージは大きくなる。
~中略
勝てば勝つほど、いつか返済しなければならない「評判」を、利息付きで溜め込んでいるのだ。

これはまさに、頂点にいる者でしかわからない真実であろう。スポーツ選手含め、競技の世界に生きている人全てがこのような感覚を持つのではないだろうか。

最終的に物事に長けるにはどうすればよいか、については下記の記述がある。

勝ち続けるとは、「頑張ることにためらいを持たない」ことでもある。

この本では極めてシンプルに、ひたすら努力を重ねることの重要性が繰り返し語られる。基礎が大事であると。前回で紹介したプロゲーマー「ときど」氏と異なり、派手なエピソードがほとんどない。淡々と、きわめてストイック。そこが氏の魅力なのだろう。

前述の「EVO Japan」においても、堂々の3位入賞。動体視力の衰えなど、ゲームは一般的に若い人が有利なはずなのに、それをカバーする精神力、胆力、老獪さなどでこれからも長く活躍されるに違いない。

おそらくゲーム動画で最も再生数の多いものの一つであろうEVO2004(14年前!)での「背水の陣」と呼ばれる名勝負を最後に。ゲームを知らなくても、何度見ても感動する。

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