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社長日記

IPの本

ゲーム業界にいると「IP」いう単語はよく聞きます。しかし、一般的には普段使うような言葉ではないかもしれません。今回はゲーム関連書籍の中でも、私が知る限り初めて「IP」をメインテーマとした本をご紹介したいと思います。

『IPのつくりかたとひろげかた』
イシイ ジロウ (著)

あらためて、「IP」とは?国語辞典で調べてみる。

IP(intellectual property)、知的財産権。
知的な創作活動による利益に認められる権利。特許権・実用新案権・商標権・意匠権・著作権など。知的所有権。無体財産権。

法律用語がずらずらと並び、全く頭に入ってこない。

本書の帯にはこうある。

【IPとは?】 
ビッグビジネスの源泉となる強力なコンテンツの「ストーリー・キャラクター・世界観」のすべてを網羅する知的財産権のことを意味する。

全く意味合いが異なる。が、ゲーム業界でのIPはこちらに近い。というか、私も本書を読むまではもっと狭義なとらえ方をしていた。すなわちIPとは主に原作と登場するキャラクターたちである、と。つまりドラゴンボールであれば孫悟空やベジータ、名探偵コナンであれば江戸川コナンや安室透など。しかし著者はもっと広くとらえる。ストーリー、世界観もIPであると。

世界観はわかるが、ストーリーも?この本の面白いのはここである。ストーリーもIPである、と断言している。話が前後するが、この本の著者イシイジロウ氏はファミ通にて40点満点の評を得たサウンドノベル『428 〜封鎖された渋谷で〜』や『タイムトラベラーズ』など数多くのアドベンチャーゲームを手掛けたゲームデザイナー。いわばお話のプロである。だからこそ、ストーリーIPという考えに至ったのだろう。

ストーリーIPとして例に挙げられているのが『ターミネーター』と『宇宙戦艦ヤマト』。『ターミネーター』のあらすじはこんな感じ。

人類とロボットが戦う近未来。激しい攻撃で絶滅寸前の人類であったが、リーダーの指揮によりじょじょに優勢に。そこでロボット側は人造人間「ターミネーター」を過去に送り込み、リーダーが生まれる前に、その母親の殺害を試みる。

言われてみれば、毎回このパターン。これがいまいち『ターミネーター』シリーズが跳ねない理由であると。なるほど、ヤマトも同様に感じる。結局、とてもよくできた1のリメイクの域を出ないのである。

そこで著者が提唱するのが世界観IPである。これは聞きなれない言葉だが、具体例を挙げられると腑に落ちる。ここ十数年来で、エンタメコンテンツの最大ヒットとなった「マーベル・シネマティック・ユニバース」がまさにそうである、と。確かにスパイダーマンやキャプテン・アメリカといった単一のヒーローという視点でなく、すべての作品が地続きであり、かつ、節目節目で大きな集大成のような映画が来てそのたびにファンを増やしている。キャラでもなく、ストーリーでもなく、牽引しているのは「マーベル」という世界観というくくりしか考えられない。

長々と書いたがここまでで6章構成の2章あたり。事例がゲームより映画が圧倒的に多いため本コーナーの趣旨と若干外れるが、様々な視点でIPの成功例、失敗例が語られるので非常にためになる。IPという珍しい切り口の本書、エンタメに携わる人に広くおススメです!

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