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社長日記

ゲーム関連の希少本:その一

 依然、リモートワークを継続中です。かれこれ2か月ほどになるでしょうか。最近はこの働き方にも慣れてきて、従来のように早朝起床し、混んだ電車に乗って会社に行くことができるのかな、という気もします。とはいえ一日も早く事態が収束し、心配事もなくオフィスでゲーム制作ができるようになることを切に望みます。

 定期的にゲームに関連する本を取り上げる本コーナー。前回同様、自宅にいる時間が圧倒的に長くなったことを活かして書架の奥底に眠る趣味で集めたゲーム業界本をごそごそと探してきました。今回のテーマは「希少本」です。発行部数が少ない、古くに出版された、既存流通にのっていない等…… 私が持つ本の中でも、とりわけ珍しい本を選んでみました。なお何をもって希少とするかですが、Amazonで検索して定価より高く売買されているもの、としております。

『新明解ナム語辞典』
西島孝徳(著)

 古くからビデオゲームに熱中してきた世代にとって、ナムコ(現在はバンダイナムコエンターテインメント)というメーカーは特別な存在である。『パックマン』『ギャラガ』『ゼビウス』『ドルアーガの塔』。これら名作がわずか数年で、立て続けに出たのだからたまらない。

 1980年代前半はいわゆるナムコ黄金期と称され、今でも通じる名作を数多く輩出した。我々ゲーム好きは、「ナムコの新作はどんな新しい遊びを提供してくれるのだろう」とナムコの作品を待ち望み、必ず面白いに違いないと無条件に信じていた気がする。

 本書は一ゲームメーカーである「ナムコ」だけをフィーチャーした辞典。個人的に辞書、図録、図鑑といった類のものが昔から大好物だったので、「ゲームの図鑑」が発売されると聞いて心が躍った。しかし価格が5,000円とべラボーに高い。当時、学生だった私には手が出しづらかったが、どうにかやりくりして入手したのも良い思い出である。

 外観からして大変立派で、国語辞典や和英辞典のように厚いボール紙の函から本書を抜くと、プラスチックで成型された電子基板を模した見たこともない装丁。今回、久々に取り出してみたのだが、高級感に今でもうっとり。

 内容は辞典とあるだけに、ゲームに関する様々な言葉の紹介を大量のイラスト、写真とともに面白おかしく紹介している。短いコラムの集合体のような感じ。作者(一般のナムコファンの方!)が一人ですべてを書き上げているそうで、昔も今も変わらないマニアの尋常ならざる熱量を感じる。

 ナムコも全面協力とあり、通常であれば世の中に出ないであろう企画書や設定画など本書でしか見れない貴重な資料も多数紹介されている。図録のように楽しめるのは、これらの豊富な画像によるところが大きい。

 奥付を見ると初版は昭和62年、発行者はなんと孫正義。ソフトバンクがまだ日本ソフトバンクという社名でパソコンのソフトの販売や、『Oh!MZ』などのパソコン雑誌を出版していた時代。したがって社長である孫さんが発行者になるわけだが、今や日本を代表する経営者の一人なのだから歴史を感じる。

 希少本である理由は凝った装丁により、再販が難しく、発行部数が少ないと思われるため。このあたりは出版に携わった方がより詳しく述べられているので興味あるかたはこちらで。Amazonで見ると今は1万2千円くらいで出品されているが、数年前は2万円前後で取引されていた記憶がある。内容的には当時のゲームを知らないと楽しめないので刺さる層は限られるが、ナムコのキャッチコピーであった「遊びをクリエイトする」ということが、書籍においても発揮されているのがわかる一冊だと思う。ずっと大事に持っておきます。

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