ファミコン語りの本:その1
シャチョーの趣味と実益を兼ねたゲーム関連書籍の紹介、15冊目。
ゲームに関する本というと、
・攻略本
・業界研究本
・開発用参考書
・レビュー集、ソフトカタログ
などいろいろあるが、この本はカテゴリーがわけづらい… というかあまり類似するタイプの本がない。基本的には著者が昔遊んだ様々なファミコンのゲームを紹介する体をとっているのだが、ゲーム内容よりもそのころの思い出や自分に起きた出来事に比重が置かれており、おおよそ「自分とゲームのエピソード」という感じで淡々と進んでいく。
通常であれば、友人との単なる趣味の話、あるいは個人ブログで書くような内容が書籍化されるという珍しいパターン。というのも、それは作者が「ゲームを3万本以上集めた」「ファミコンに1千万円使った」といった肩書で活動している「ファミコン芸人 @famicom_fujita」さんの本だからである。
『ファミコンに育てられた男』
フジタ(著)
http://amzn.asia/d/1ViTw0N
例えば、『スパルタンX』という比較的有名なアクションゲームの紹介では、ゲーム内容についての記載はほとんどなく、「5周クリアしたら好きなゲームを買ってやるよ」と一回り離れた実のお兄さんに何気なく言われたことをきっかけに、猛特訓して5周を実現した、という、男兄弟がいる家庭では日本中のどこにでもあったようなあるある話に。ちなみにこのゲームはかなり難易度が高く、1周すらクリアは難しいのに5周クリアはそうとう無茶である、ということがわかるくらいの下地があったほうがより楽しめるが、全然ゲームに関係ない話も多いので大丈夫。
全体的には一つのゲームに上記のようなエピソードを交えて30本強、ファミコンのいろいろなゲームを紹介しているのだが、この本の見どころはそこではなく、プロローグとエピローグにある。とにかく家庭環境が特殊かつ凄まじいのである。今の言葉で言うと相当なネグレクトであろう。
そこでこの本のタイトル『ファミコンに育てられた男』が効いてくる。親の加護を受けず、小学生にしてほぼ一人暮らしを強いられ孤独でおかしくなってしまいそうな時に、ゲームをすることで寂しさを紛らわせ、努力すれば報われることを、注意深く観察すれば必ず解決の糸口があることを、勝てないと思った相手にも思わぬ弱点があることなどを学んだという。まさにファミコンが先生であり、育ての親であると。
家庭環境に関しては、実はもっと過酷なことが書かれているのだが、本編であるゲーム紹介では超メジャーな『スーパーマリオブラザーズ』『ボンバーマン』あたりはもちろん、『マニアックマンション』『不如帰』『ゴーストバスターズ』など珍しいものも。さすが3万本所有者、引き出しの多さが桁違い。
プロローグとエピローグに書かれた大変な家庭環境と、くだらないエピソードが満載のゲーム紹介という不思議な味わいの本。おススメです!